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2025年05月31日(土)
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認知症は相続にどんな影響をあたえるの?

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認知症は相続にどんな影響をあたえるの?

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増える認知症、困る相続人
高齢化が進む現代の日本では、認知症にかかるお年寄りも増えています。特に困るのが、お金関係。日々の買い物ならまだいいのですが、「相続」など金額が高い手続きを任せるのには不安が伴います。

しかし、そもそも認知症の人は相続の対象に含めてよいのでしょうか?また、認知症になってとしても、有効に遺言を残すことはできるのでしょうか。

認知症
認知症でも相続の対象になるの?
例えば、3人家族の父親が亡くなったとしましょう。

この時、父親の財産は、法定相続人である妻と子どもの二人で話し合って分けることになります。これを遺産分割協議といいます。では、仮に母親が認知症になってしまった場合には、息子が一人で財産を相続することができるのでしょうか。

この点、遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。もちろん、認知症にかかっている人もこの中に含めます。つまり、このケースでは母の合意がなければ、遺産分割協議は有効になしえないのです。

しかし、そもそも認知症の相続人が自分で判断して「その相続の分け方なら賛成です」と発言したとして、その内容に信ぴょう性はあるのでしょうか?

ここでポイントになるのは、認知症の相続人に意思能力が備わっているか、という点。意思能力とは法律行為を有効に行うための判断能力のことをいい、これが欠けると意思表示は無効になります。したがって、遺産分割協議の合意をするときには、最低でも意思能力が備わっている状態でないといけません。

認知症にもレベルがありますので、ちょっと忘れっぽいという程度であれば、意思能力は認められるでしょう。一方、会話が成り立たないレベルの重度認知症であれば意思能力は欠けているといえ、遺産分割協議の合意としては認められません。

重い認知症の場合には「成年後見制度」を利用する
では、重い認知症の人に合意をしてもらうにはどうすれば良いのでしょうか。

この点、民法は成年後見人という制度を用意しています。これは、自分で物事に十分な判断ができない人に代わって、裁判所が選んだ成年後見人が判断を行う、というものです。

具体的には、成年被後見人(認知症になった本人)を当事者とする売買などの法律行為の代理や、成年被後見人が自分でしてしまった契約の取り消しをすることができます。例えば、訪問販売で認知症にかかったお年寄りが高い宝石を買わされてしまった場合でも、成年後見人がいればこれを取り消すことができます。

成年後見人の選任方法は?
成年後見人をつけるためには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。申し立てられるのは本人とその配偶者、4親等内の親族だけ。本人のいとこまでは許される、ということですね。

後見開始の申し立て書のほか、申立人の戸籍謄本、本人の戸籍謄本・戸籍の附票、成年後見登記事項証明書、診断書、成年後見人候補者の戸籍謄本・住民票・身分証明書・成年後見登記事項証明書を添付して申立てを行いましょう。

この手続きをするにあたっては、特に弁護士に依頼する必要はありません。自分で行えば費用も安く済みます。具体的には収入印紙800円、登記印紙4,000円、裁判所から書類を送付するときに必要な切手代がかかります。

申立てを受けた裁判所が「後見人が必要」だと判断すれば、成年後見人が選ばれます。ここまで来るのに、数か月~1年ほど要します。

多くの場合には同居の親族が成年後見人になりますが、弁護士、行政書士、司法書士などの専門家がなることもあります。いったん成年後見人に選ばれると、やむを得ない事情がない限りやめることはできませんので注意しましょう。

成年後見人と遺産分割協議には落とし穴がある?
ここまでまとめると、意思能力を欠く相続人がいる場合には、成年後見人を選任し、遺産分割協議の同意を得なければならない、ということでした。

相続人の間で同意がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、話し合った内容をまとめます。最後に署名、押印が必要になりますが、これも成年後見人の代理で足ります。

しかし、実はここに落とし穴があるのです。さきほど成年後見人には同居の家族がなることが多い、と説明しましたね。そうなると、成年後見人が相続人の一人であるということが起こりえます。

例えば、息子が母の後見人でありながら相続人のひとりでもある、という状態ですね。しかし、これでは結局成年後見人を立てた意味がなく、ほかの相続人が自分の取り分が多くなるような合意をすることも可能になってしまいます。

そこでこのように被後見人(認知症になった本人)と後見人の利益が対立するような場合には、後見人とは別に「特別代理人」を選任しなければなりません。特別代理人の選任にあたっては、後見人同様、裁判所に申し立てることになります。

この場合にはあらかじめ遺産分割協議書の文案を提出する必要があるなど、手続きが少し面倒に。特別代理人がからんでくると、法律関係がかなり複雑になりますので、弁護士に依頼することをおすすめします。

亡くなった人が認知症だった…遺言は有効?
話は変わって、今度は被相続人(亡くなった人)が認知症だったというケースを考えてみましょう。ここで問題になるのは、「遺言」。認知症の人が作成した場合でも、遺言は有効なのでしょうか?

遺言が無効になるケースとしては、①法定の様式を欠く場合➁遺言無能力者が作成した場合③要素の錯誤に基づく場合④公序良俗・強行法規に反する場合の4つが考えられます。

認知症の人が遺言を残したケースでは➁遺言無能力者が作成した場合が問題になります。ここで遺言能力とは、医師の診断や実際の行動からみて、法律上遺言を作成することのできる能力のこと。これが欠けた状態で遺言を作成したのであれば、その遺言は無効なのです。

遺言能力については、医師の診断書を基準に様々な事情を加味して判断します。したがって、認知症の程度がどのくらいであれば遺言能力が認められるか、一概にはいえません。もしもこれから認知症の人に遺言を残してもらおうと考えているのであれば、できる限り第三者を関与させて遺言を作成するようにしましょう。

遺言無効を争うためには?
「認知症のおじいちゃんが、知らない人に全財産をあげる遺言を残している…」実際に、こういうケースは存在します。では、遺言が無効かどうかはどのように争うのでしょうか。

この点、遺言自体の効力を調停または裁判で争うことが考えられます。いわゆる「遺言無効確認の訴え」です。この方法によれば、遺言は無効になり、改めて遺産分割について話し合いを持つ必要があります。

ここで重要なのは、遺言能力について立証すること。具体的には遺言作成の経緯、遺言作成時の状況、医師による診断書、他人による干渉があったか、などを客観的な証拠によって立証する必要があります。
まとめ―「認知症だから権利がない」は大間違い
認知症だからと言って、相続財産をもらう権利がなくなったり、遺言を残せないわけではありません。

きちんと代理人を立て、第三者を関与させ、認知症の人の権利を守る必要があるのです。のちのち財産をめぐって争いにならないよう、早めに専門家に相談することが重要です。

(画像はイメージです)


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