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2025年05月30日(金)
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どうする?払いすぎた婚姻費用や払われなかった婚姻費用

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どうする?払いすぎた婚姻費用や払われなかった婚姻費用

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婚姻費用とは、結婚を営む上で必要なお金のことをいいます。離婚に際し、婚姻費用の分担については、お互いの合意によって決める、とされています。

しかし、後になって「払いすぎてしまったから返してほしい」「もっともらうべきだった」と考えることはありますよね。このような場合、払いすぎた婚姻費用や足りない分の婚姻費用を後から請求することはできるのでしょうか。

今回は婚姻費用の請求についてご説明します。
婚姻費用
婚姻費用の基礎知識
婚姻費用とは
婚姻費用(こんいんひよう)とは、結婚生活を営む上で必要となる費用のことをいいます。

これはつまるところ、生活費のことを指します。そのため、この婚姻費用の中には、具体的に、日常の生活費、住居費、被服費、食費などが含まれます。ほかにも医療費、交際費、子供の養育費が入るとされています。

このような婚姻費用ですが、夫婦はお互いに支払う義務をもっているとされます。なぜならば、法律には夫婦の扶助義務が定められているからです。
(同居、協力及び扶助の義務)
第752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
このように夫婦には扶助義務があることから、原則として離婚が成立するまで、夫婦はお互いに婚姻費用を負担する義務を負います。これが「婚姻費用分担」なのです。

ここで、おもに婚姻費用を負担する方を婚姻費用分担義務者、婚姻費用を支払ってもらう方を婚姻費用分担権利者といいます。夫婦間で収入格差があることが多いため、必然的に支払う側と支払ってもらう側に分かれるのです。

なお、婚姻費用の負担は別居している場合にも生じます。そのため、「別居しているから生活費を渡さない」というのは法的にみて許されないのです。

婚姻費用の計算方法
婚姻費用は、夫婦の資産や収入その他一切の事情を考慮して決められるとされます。しかし、基準がないと具体的な婚姻費用を算出するのが難しいですね。

そこで、一般的には婚姻費用算定表を利用して婚姻費用が決められます。

もっとも、婚姻費用の金額は、原則として当事者間の合意によって決めることになっています。そのため、婚姻費用算定表を使わずに、話し合いで自由に決めることができます。

ただし、当事者間で著しく低い金額や高い金額を定めておくと後々争いになることが多いのです。そのため、やはり婚姻費用酸定表に従っておくことが無難といえましょう。

当事者間で婚姻費用が決められない場合
当事者間での婚姻費用の合意に至らなかった場合、家庭裁判所に対し婚姻費用分担請求調停の申立を行うことができます。

ここで注意してほしいのは、「調停によって認められる婚姻費用は、申立を行った月の分からとなることが多い」という点です。そのため、申立て前の婚姻費用は受け取ることができません。ただし、財産分与という形で還元されることはあるようです。

また、緊急に婚姻費用を払ってもらう必要がある場合には、仮処分の申立をすることができます。

婚姻費用の過払いについて
話し合いの当初は「多めに婚姻費用を支払う」といったものの、後から「払いすぎたから取り戻したい」という人がいます。

しかし、先に結論を述べてしまうと、婚姻費用の過払いを取り戻すことはできません。ここでひとつ裁判例を見てみましょう。
財産分与審判及び請求すべき按分割合に関する処分申立却下に対する抗告事件、同附帯抗告事件

大阪高 平21.9.4(決)(家裁月報62-10-53)

当事者の一方が自発的に又は合意に基づいて婚姻費用の分担として相手方当事者に送金している場合、その額が当事者双方の収入や生活状況にかんがみて著しく相当性を欠くものでない限り、送金額のうちいわゆる標準算定方式に基づいて算出した額を上回る部分を財産分与の前渡しとして評価することは相当でない。
この裁判例は、婚姻費用を算定表基準より多く支払っていても、原則として過払い分を返すよう請求することはできない、と述べています。

よくあるのが、裁判で自分に有利な結果を引き出したいがために、多めに婚姻費用を払う、というケースです。裁判で負けてしまったら、せっかく婚姻費用を多く出した意味がないですよね。しかし、このような場合でも過払い分を請求することはできないのです。

もっとも、この裁判例は例外的に過払い請求をすることができるケースを述べています。それが「当事者双方の収入や生活状況にかんがみて著しく相当性を欠くもの」である場合です。

例えば、年収1000万円の夫と年収100万円の妻が離婚するとして、夫が婚姻費用を全額負担するとします。しかし、離婚協議中に夫はリストラされ、年収が0になってしまいました。この場合に夫に婚姻費用を負担させるのは、常識的に考えてあまりに夫がかわいそうですよね。

こういった「相当性を欠く」場合にのみ、過払の取戻しが可能になります。
婚姻費用請求調停から強制執行まで
婚姻費用が支払われない場合、強制執行(差し押さえ)によって強制的に取り立てることができます。しかし、いきなり強制執行をかけることはできないのです。まず調停証書や判決文などの「債務名義」を取得する必要があります。

そこで、まずは家庭裁判所に「婚姻費用請求調停」を申し立てましょう。裁判所ホームページによれば、婚姻費用請求調停は以下のように進められます。

調停手続では,夫婦の資産,収入,支出など一切の事情について,当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらうなどして事情をよく把握して,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し話合いが進められます。なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,必要な審理を行った上,一切の事情を考慮して,審判をすることになります。
調停が終了し、調停証書が作成されると、やっと強制執行…と思われるかもしれませんが、少し待ってください。まずは家庭裁判所から履行勧告・履行命令を出してもらいましょう。

これは、裁判所による命令であり、従わない場合には10万円以下の過料の支払が命じられます。「過料を払いたくないから婚姻費用を支払おう」という心理的な強制ですね。

相手がこれに応じなかった場合、ようやく差し押さえ手続きに入ります。差し押さえをするためには、調停証書や必要な添付書類を裁判所に提出することになります。裁判所が許可を出すと、差押がなされます。

ここで、差押の範囲についても見てみましょう。婚姻費用は支払われないと元配偶者が生活していけません。そこで、将来支払うべき分についても差し押さえができるとされています。

差押の対象としては、給与や退職金などが挙げられます。給料の差し押さえをする場合には、給料の2分の1まで差し押さえることが可能です。

まとめ―婚姻費用の分担は慎重に行おう
婚姻費用を払いすぎたとしても、後ほど取り返すことはできません。婚姻費用分担義務者となった人は、慎重に婚姻費用を決めましょう。

また、婚姻費用を受け取る側も、相手が支払えるような現実的な額に設定する必要があります。万が一、支払われるべき婚姻費用が滞った場合には、まず弁護士に相談してみましょう。

(画像はイメージです)


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