離婚は長期戦?離婚する際決めなければいけないこと
精神的な負担はもちろん、金銭的にも体力的も大きな消耗を伴う離婚できれば人生で経験したくないイベントのひとつです。一方、最近では離婚の件数は増えているともいわれており、もっとも身近な法律問題のひとつといえるかもしれません。
さて、そんな離婚問題ですが、具体的にどのような点で大変なのでしょうか?
ここでは、離婚をする際に一般的に決定しなければならない事柄を述べるとともに、簡単な説明を加えていきたいと思います。
まず離婚する際に決めなければいけないのは、財産に関する問題。
たとえば、夫婦共働きで稼いだお金で不動産や株式を購入していた場合、それを離婚後にどう分配していくかを決定しなければなりません。
このようなケースでは、平等の観点から、夫婦で1対1に分配するのが原則とは言われていますが、実際には収入の差や離婚の原因をどちらが作ったのかといった諸事情により、この原則に微調整が加えられていくことになります。
さらに、DVや不倫といった一方の配偶者の有責行為によって離婚に至った場合、当然慰謝料が発生するわけですが、その額をどれくらいにするかといった問題もあり、まずは当事者でこれを決定していかなければなりません。
さらに、子供がいた場合には、どちらが親権を取得するのか、親権者でなくなった方に面会をどの程度認めるかといった事柄も考えなければなりません。
これは、両親の意思というよりは、子の健全な育成の観点から両親との接触が必要かといった観点からなされるもので、例えば子供自身が拒絶していたり、結婚生活の時点で虐待していたことが発覚するなどすれば、当然、面会は認められない方向へ流れていくこととなります。
裁判離婚へともつれこむパターンとは
このように、いったん離婚すると決意するだけでも大変なのに、決意した後も相手方から離婚自体の合意をとりつけて、さらに決めなければならないことをすべて1つずつ話し合っていかなくてはなりません。離婚すると生活が一変することもあるもわけですから、当然、簡単に話し合いはまとまりません。
金銭面、精神面の問題から離婚の解消を提案される可能性も大いにあります。
では、離婚協議がまとまらない場合にはどうするのでしょうか?
協議離婚がうまく成立しなかった場合、いきなり裁判に行くのではなく、まずは裁判所の調停委員に間に入ってもらい、双方の意見を伝えて議論をまとめてもらうことになります。
そして、この離婚調停でも合意をとりつけられない場合に、初めて離婚訴訟を提起し、裁判で離婚事由の有無を争っていくこととなります。
離婚裁判で争われる内容とはどんなもの?
これまで述べてきたように、離婚裁判という制度は、協議、調停といった過程を経てはじめて利用できることとなるわけですが、実際、こうして裁判に至るケースは、全体の1パーセントから2パーセントの割合にすぎない、といわれています。
つまり、ほとんどのケースではそれ以前の、協議や調停で離婚を合意し、財産や子供の問題についても解決しているというわけですね。
では、仮に離婚の話が裁判にまでもつれこんだ場合、どのような内容を争っていくことになるのでしょうか。
今まで行ってきた離婚協議や離婚調停と離婚裁判が大きく違うのは、裁判所は法律を解釈・適用して当事者間の紛争を解決していく機関ですから、民法に規定された離婚事由に、当該事案が該当するかを順次判断していくという点になります。
では、具体的に、民法に規定する離婚事由とは何があるのでしょうか。
離婚事由が規定されているのは、民法770条各号ですが、ここには
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
とあります。
不貞行為とは、いわゆる不倫、配偶者以外の異性と性的関係を持つことです。ちなみに多くの男性が勘違いしていることですが、性風俗の継続的な利用も法的には不貞行為に該当することとなります。
また、悪意の遺棄とは、平易な言葉で表現すると、婚姻関係を維持するための努力を意図的に怠ることを指します。
これは、単に家事の手伝いをしないといったレベルのことを指すのではありません。
夫婦は、婚姻関係を結ぶことによって、相互に扶助し、協力し、同居すべき義務を法的に負うことになります。
にもかかわらず、正当な理由もなく働かない、働いているが給料を家庭に入れない、家事子育てを一切しない、長期間家に帰ってこない、などといったこと実態が認められるときには、上記の協力義務、扶助義務、同居義務に反するものとして、悪意の遺棄に該当することとなります。
他方で、同居や協力、扶助を怠っても、そこに正当な理由があれば悪意の遺棄とはなりません。
例えば、仕事による単身赴任や(冷却期間としての)別居などは、経済面や夫婦関係の調整といった側面から正当化されることになります。
また、夫婦関係が破たんに至る理由は様々で、類型化には限界があることから、5号の「婚姻を継続しがたい事由」には、家庭裁判所がある程度柔軟に離婚の是非を判断できるように調整する役割が与えられています。
典型的なのが家庭内暴力や虐待(DV)ですが、そのほかにも一方配偶者の過度な宗教活動や性生活の不一致、親族との不和といった事柄もここに含まれます。
裁判離婚でかかる費用は?
では、離婚裁判にまで至った場合、どのくらい費用がかかるのでしょうか。
まず、どんな訴訟であっても、訴訟を提起する場合に必須なのが収入印紙と郵便切手。
印紙代は裁判所に納めるもので、離婚だけを求めるときには13000円となりますが、そのほかに財産分与や慰謝料の額の決定まで求めていく場合には、原告がまず請求額を決定し、その額に応じた印紙代を支払っていくことになります。
また、郵便切手代に関しては、裁判所によって異なります。東京であれば6400円となりますが、このあたりについては各自で管轄の裁判所に問い合わせや、ホームページを確認が必要になります。
そのほか、弁護士を代理人として据えるときには弁護士費用が別途かかります。
もちろん本人訴訟を選択することもありえますが、法律の専門家は、主張を的確に整理し、裁判を有利に進めることに長けています。このような専門家に相談してみるのが賢明であると思います。
とりわけ、財産分与や慰謝料についても争点化している場合、その相場や支払い方法に関しては法的な判断がどうしても必要になりますし、弁護士に依頼すれば書類の作成から裁判所への代行までを請け負ってくれますので、仕事などで忙しい場合はなおさら弁護士に依頼するのがよいでしょう。
一般的な弁護士費用は、「相談料」「着手金」「成功報酬」の三つから構成されます。
こうした費用の捻出が難しい、というのであれば、法テラスに相談するといった選択肢もあるでしょう。
なお、離婚裁判の決着がつくのは、内容にもよりますが一般的に約1~2年かかるといわれていますから、その間の生活費用まで請求したい場合には、婚姻費用分担請求も併合して提起することをお勧めします。
離婚裁判を、早期かつ有利に進めるためには?
上述のとおり、離婚裁判は解決に至るまでが非常に長期という考えが一般的です。
もっとも、その間も弁護士との相談料はかかってしまいますし、新しい生活を気分一新で始めるためには、やはり早期に解決することが望ましいのは間違いありません。
では、ここで本題となりますが、早期かつ自己に有利に裁判をすすめるためにはどうすればよいのでしょうか。
どんな裁判であってもそうですが、裁判官は証拠をもとに事実関係を認定し、そこに法的評価を加えることで判決を出していきます。
したがって、たとえば離婚の原因を不倫やDV、浪費などに求める場合、それを明確に示す証拠を取りそろえなければなりません。
不倫であれば浮気相手とのやりとりのコピーや写真、浮気を認めた場合にはその念書、DVであればけがした部分の写真、医者の診断書などがこれにあたるでしょう。
悪意の遺棄の場合には、生活費が途絶えたことのわかる通帳記録、別居に至る経緯を記した書面など、暴言などによるモラハラの場合には、それを記録した音声ファイルや、日記、精神的ストレスで通院した際の診断書などが証拠として有効なものといえるでしょう。
こうした決定的な証拠があれば、裁判所としてはその主張の逃避の判断がしやすく、望むような判決は比較的迅速に得られるものと考えてよいでしょう。
たとえどんなに凄腕の弁護士をつけたとしても、このような証拠が十分に集められなかった場合には、裁判が長引いてしまう可能性は十分に考えられるでしょう。
また、当然ですが、親権の所在や財産分与の方法など、離婚の可否以外の争点がある場合には、その審理にかかるぶんだけ長期化します。ですから、財産分与については、共有財産の特定など、できるところまでは当事者同士でしておくことが、裁判の早期解決の近道となると言えるでしょう。
どうしても長引くようであれば、和解も
離婚裁判が長期化することは、当事者双方にとって気持ちのいいことではありません。
そのため、裁判官のほうから、和解の提案をすることがよくあります。
提案を受けた和解案が納得のいくものであれば、受け入れるの一つの手ではあるでしょう。仮に和解提案を受け入れれば、1ケ月と待つことなく裁判を終結させることができ、双方ともに時間、お金を消費せずに済むからです。
早い段階から法の専門家の手を借りる
結局、裁判が泥沼化、長期化するのは、紛争がある程度まで悪化するまで弁護士に依頼しなかったというケースがすくなくありません。
離婚協議の段階で弁護士を互いに立てて、そこで話し合いをすれば、財産や子供のことを含めて比較的早期に決着がつき、その後の処理もスムーズにすすむことが多いのです。
したがって、裁判離婚に至るより前に、なるべく早く弁護士に頼ることが、結果的に費用や時間の節約につながる、という可能性も考えて検討してみましょう。